この物語は、僕の十四の誕生日に始まる。
そして――。
この物語は、僕の十五の誕生日に終わる。
(拓己/1巻/P15)
海が見たいのですが、わたしの住んでいるところには海がありません。
あなたの町に、海はありますか?
(唯/1巻/P33)
朝、女の子に会って、その子が微笑んでくれただけのこと。
それなのに。
なんだか幸せな気持ちがするのは、どうしてなんだろう。
(拓己/1巻/p78)
たとえどんな悪い結果になっても、体験したことって消えないわ。その時の気持ちや、思いや、そんなものは残るの。
(カスミ/2巻/p49)
拓くんがいつかカスミさんのことを忘れてしまうとしても、あたしは忘れません。
彼の優しさを。
彼の言葉を。
彼のぬくもりを。
ふたりで子猫と遊びながら空を見あげたこの瞬間を。
絶対に忘れません。
(唯/2巻/p65)
表面を見て、それだけでわかりあってるつもりになるなんて寂しいじゃない?
(遙/2巻/p164)
特別な一瞬ってのまさしく一瞬にすぎてゆくわけで、人はむしろ長い長い日常を生きるんだ。
本当に大切なのは、その日常のほうなんだろう。
言葉だけじゃない。
人はきっと、言葉だけで会話をしているわけじゃないんだ。
(拓己/4巻/p51)
なんでこんなに悲しくなるんだろう。
嬉しいのに。
泣きたいくらい嬉しいのに。
(唯/2巻/p64)
あやふやなのよ。
なにもかも。
自分も。
だから――。
その時だけは、自分が生きてるって、わかるの。
(七海/2巻/p4)
ああして、朝の10分間、ただ黙って教室にいることがあたしたちの絆なの
(弥生/2巻/p222)
片思いで。
どうにもならなくて。
それでもこんなに幸せだなんて、自分でもどうかしてると思う。
(孝弘/3巻/p162)
けど、そんな場所でも、人は誰かに恋をする。
その気持ちは、偽りなんかじゃない。“ほんとに大事なもの”なんだ。
きっと。
(拓己/2巻/p236)
人という生き物は、気持ちなんていう見えないもののために生きるし、時に死んだりもする。
それはバカげたことかもしれないけど、バカげているからこそ美しいのかもね。
(遙/2巻/p299)
変化してゆくことがいいのか悪いのか分からない。たぶん、そういう問題じゃないんだろう。
変化は必然で、僕たちはそれに抵抗したり流されたりしながら、なにかを見つけるんだ。
逆に失うこともあるだろうけど、見つけようとすべきなんだ。
なぜなら、僕たちの未来は限られている。いつ、どんな形で、終わりを迎えるか分からない。
迷ってる暇なんてないんだ。欲しいのなら、手を伸ばさなきゃいけない。
それでも届かないなら、足だって、身体だって伸ばさなきゃいけない。
たとえ届かなかったとしても、迷って、悩んで、ただ立ちすくんでいるよりはずっとマシだ。
あの時、自分には唯がいた。
それで十分だった。
それがすべてだった。
(拓己/3巻/p230)
今までコクーン内では感じだことのない、新たなぬくもりが最後に現れた。拓己はそれをよく知っていた。
夕方の帰り道、長く伸びるふたつの影を追いながら、ゆっくりゆっくり歩いた。すぐ隣にいるのに、なかなか顔を見られなかった。
どうでもいいことを話し、笑いあい、それでたまらなく幸せだった。クツシタたちとじゃれあう声。時折見せた透明な瞳。
触れようとすると、いつも手の間をすり抜けていった。いや、違う。触れようなんて思えなかった。
触れたら、それは壊れてしまいそうだったから。なによりも大切な宝物だったから。この世界よりも大切だったから。
(拓己/5巻/p123)
僕は歩き続けた。
半年前に、唯と歩いた道を。
唯が命を失っていった道を。
僕は歩きつづけた。
(拓己/5巻/p276)
今、あたしに残されたわずかな命をかけて、届くことを祈ってます。
(唯/5巻/p278)
けどね、拓くんの血が、子供たちが、この先もこの星でいつまでも生きつづけられるといいな。そう思うんです。
だとしたら、あたしの小さくてちっぽけな命が消えてしまうことにも、どうにか耐えられる気がします。
拓くんの血が繋がっていく星がこの宇宙にあるなんて、奇跡のようにすごいことです。
ほんとに!
(唯/5巻/p280)
拓くんとずっとずっといっしょにいたかった。すごく恥ずかしいけど、キスだってしてみたかったです。
それくらい、拓くんのことが好きでした。
拓くん、ありがとう。
さようなら。
(唯/5巻/p281)
それぞれがお喋りしたり、笑ったり、怒ったり。平凡で、穏やかで、なにげなく過ぎていく、けれど大切な一瞬。下らなくて素晴らしい日常。
それは彼らが守った世界。
(after days/p254)
川はずいぶん遠くから流れてくる。
その途中で蛇行したり逆流したりすることもあるけれど、結局のところ、やがて川は海にたどりつく。
ただ、そのころには、美しく澄んでいた水は薄汚れてしまう。
川底も見えないくらい、濁ってしまっている。
それでも、とにかく――。
川は海へたどりつくんだ。
河口(リバーズ・エンド)
そこは、川の終わり。
そして、海の始まり。
(1巻/p264)