その一歩はなんの意味もない一歩だったかもしれないけれど、踏みだしたというその気持ちは無意味なんかじゃない。
きっと
(みはる/「毛布」/p90)
「迷ってる自分がわかってるんなら、迷ってていいと思うよ」
(都築/「毛布」/p133)
この世の中に本当に正しいことなんてないかもしれないんだし、あるのは、正しいと思ってもいいことだけなんじゃないかな。
(都築/「毛布/p135)
この世の中はあまりにも不確かで、未明が感じているように、すべては手のひらからこぼれ落ちてしまうのかもしれない。けれど、こぼれ落ちてしまったものをふたたび拾うことはできる
はずだ。きっとできるはずだ。
(和人/「毛布」/p163)
「迷ったり遠回りすること自体は全然悪くないって。大事なのは迷ってるって自覚してるかどうかだよ」
(都築/「毛布」/p170)
不安になってばっかじゃ、そのうち不安に足をすくわれるんだ。そんなことになるくらいなら、なーんも考えないでまっすぐ進んだほうがいいんだよ
(和人/「毛布」/p276)
気持ちも、月も、時間という絶対的なものに押し流されながら変わってしまう。
(奈緒子/「流れ星」/p7)
「本当はもっともっと動くべきなんだ。動くことによってしか見えてこないことがあるんだからさ」
(加地/「流れ星」/p122)
だから、わたしは進もうと思う。
恐れながら、泣きながら、進もうと思う。
(奈緒子/「流れ星」/p279)
「えいやって飛び込めばね、人間なんて泳げるもんだ」
(哲也/「ひかり」/p78)
「そんなふうに自分を追いつめても、悪いことが解決するとは限らないと思う。どうにもできないことだってあるから。なにもかもがどうしようもなく無力なときだってあるから」
(智子/「ひかり」/p142)
世の中は決してきれいなことばかりではない。そして不思議なことに、きれいではないことが、見方を変えればものすごくきれいだったりする
(智子/「ひかり」/p151)
いろんな道がわしたの前にあって、どれに進むのか今のわたしにはわからない。そのことが怖くもあり、嬉しくもある。
(智子/「ひかり」/p241)
泣きたくなることもあるだろう。自らの歩みを呪うこともあるだろう。
それでも、わたしたちは生きていくしかない。
わたしはそして知っている。
人生には、時にとてもすばらしい瞬間もあるのだと。
(智子/「ひかり」/p242)
自分でもよくわからないこと。
曖昧なこと
はっきりしないこと。
そういうのはあいまいなままにしておいた方がいいんだ。
(彰二/「空色」/p101)
この世にはもちろん面白い映画がたくさんある。素晴らしい映画がたくさんある。泣ける映画がたくさんある。そしてその百倍くらいの数の下らない映画だってある。
だけど本当に特別な映画は滅多にない。
(彰二/「空色」/p214)
正しいことをしようとして、大きく間違ってしまうことだってあるだろう。純粋な好意や永遠なんて、わたしは信じていない。でも、たまにこういう瞬間がある。通じたように思えることがある。
(香織/「月光」/p117)
真剣に生きてるとか、生きてないとか、そういうのは関係ないのだ。どれほど真剣であろうと、いや、真剣であればあるほど愚かなことをしてしまう。誰のせいでもない。誰が悪いわけでもない。
人なんて、しょせんはその程度の生き物なのだ。
(香織/「月光」/p220)
誰かの人生に関わって、ほんのちょっとだけ方向を変える。それでみな、少し幸せになる。
(彩乃/「彩乃ちゃん」/p193)
わたしたちは同じ場所に留まることなんてできない。たとえ留まろうと思っても、周りが変わってしまう。こうして影が角度を変えるように。どれほど大切に手入れしても、革靴がだんだん
くたびれていくように。
(ゆきな/「九つ」/p90)
小説であれ、空の月であれ、吹き抜けていく風であれ、ただ在るだけだ。意味を与えるのは、読んだり見たり、あるいは感じたりするわたしたち自身だった。
(ゆきな/「九つ」/p289)
人は愚かだ。間違うことだってある。それでも、一瞬一瞬、確かな幸せを得られるなら、間違うことを恐れるべきじゃない。
(禎文/「九つ」/p289)
ああ小説とは、と思った。どこかの誰かが書いただけの話。まったくの作り物。それがなぜか、これほど絶妙なタイミングで、心に飛び込んでくる。とても不思議なことだ。そして、とても
大切なことだ。
(ゆきな/「九つ」/p310)
終わりだと焦っても、時間は案外残ってる。取り返しのつかないと思ったことだって、まだ間に合うのかもしれなかった。
(友香/「橋をめぐる」/p71)
どんなに準備を整えても、タイミング次第で失敗する。準備を疎かにしても、タイミング次第であれよあれよと登ってしまう
(銀座の生き字引/「橋をめぐる」/p71)
「まずは行動してみようぜ。でないと駄目かどうかわからないじゃないか。駄目だったら駄目で、そこから考え直せばいいんだ」
(哲也/「橋をめぐる」/p227)