■橋本紡先生について

1967年9月22日生まれのおとめ座のAB型。三重県伊勢市出身の作家。
以前はライトノベルを中心に執筆していたが、ここ数年は一般文芸での活躍がほとんどである。
なお、度々女性作家と間違われるが、れっきとした 男性作家である。

作家になる前はひどい貧乏生活だったようで、本人はインタビューやエッセイなどで、 部屋は4畳半、電気は未払いで毎月のように止まり、ガスも水道も電話も止まるほど。1日の食事は食パン1枚に卵1個(1日の食費35円)であったと 語っている。

そんな中、1998年、長編4作目の「サクリファイス」にて第4回電撃小説大賞「金賞」を受賞。翌年2月に「サクリファイス」を改題、加筆、修正した 『猫目狩り』で作家デビューを果たす。
ちなみに『猫目狩り』は大コケしたらしく、結局再版されることはなかった。現在は絶版状態になっており、そのため入手困難である。

その後、初シリーズの『バトルシップガール』を発表。当初はシリーズになるかは売れ行き次第だったようだが、結局全6巻に、番外編であるSPまで発売 された。
完全にSFな物語であり、今の作風とは180度異なるためか橋本紡ファンの間では黒歴史扱いされている感もある。が、当時はそれなりに良く売れていたこと から言っても、決して駄作ではない。作風は違っていても作中に「橋本紡」は発揮されているように思うし、読まず嫌いをしてる人はちょっと手に取ってみよう。

翌年に次シリーズの『リバーズ・エンド』を発表。この作品はSFを基調としていながら、運命に引きずられながらも、時には諦め、時には必死に抵抗しよう とする少年少女らの、心の葛藤や感情を淡く、切なく、丁寧に描き、SFとは別の”日常”を深く思い起こさせる作品となっている。
大ヒットとまでは行かないものの、思春期の少年少女の心の揺れを繊細に描き切った同作品は多くの共感を呼びファンを増やした。今でも、後述する 『半分の月がのぼる空』より『リバーズ・エンド』の方が好きという人は少なくない。

その後、『毛布おばけと金曜日の階段』を経て、ついに『半分の月がのぼる空』シリーズを発表。
「ライトノベルにおいて日常を舞台にした物語を作ってみたかった」という言葉通り、SF等の不思議要素や派手な格闘シーンを完全に排除した、平凡な少年と少女の日常を描いた作品となっており、これはライトノベルという レーベルとしては異色であった。
心臓病で入院中の少女と、少年が出会い、段々と惹かれあってゆく。といった一見どこにでもありそうなテーマでありながら、数多くの魅力的なキャラクター、 独自の設定や文体、そして過去、現在、未来という3つの時空をうまく融合した独特の世界観を作り上げ大ヒット。アニメ化、コミック化、ドラマCD化に 留まらず、2007年には電撃文庫で初となるTVドラマ化し、そしてなんと、今春には実写映画化もされた。映画は全国各地で上映され話題を呼び、日本ロマンチスト協会の「本年度最高のロマンティック・ムービー」にも選ばれた。
また、映画公開に合わせ、台詞を伊勢弁に変更するなど本文を大幅改稿し、ハードカバーとして『完全版 半分の月がのぼる空』(上下2巻)が刊行された。
そんな大ヒットであるため、『半分の月がのぼる空』の舞台である三重県伊勢市には数多くのファンが舞台巡礼に訪れている。 また、作品中に登場した砲台山のモデル、「虎尾山」では、虎尾山(砲台山)をきれいにしようという目的で地元の方々がNPO法人「自利利他」を発足させ、 清掃活動を行っている。全国各地の半月ファンが清掃活動に協力し、橋本紡さん本人も何度か参加している。

なお、先述した半月の実写ドラマであるが、ファンの間ではなかったことにされている。


『半分の月がのぼる空』においてライトノベルというレーベルで一定の成功を収めた後、「新たな挑戦をしたい」という思いから一般文芸界に進出。
2006年2月、『流れ星がきえないうちに』において一般文芸デビューを果たす。
これは「半分の月」のある大きなテーマを全く別の角度から描いた作品でもあり、さらに初の一般文芸作品だったこともあり話題を呼んだ。
そして現在まで幾度の重版を繰り返し、翌年には「Timebook Town」において電子書籍化、08年には文庫化もされた。 さらに2007年2月にベネッセによる「高2進研プロシードテスト模試」に出題されている。
しかし当時からライトノベルから一般に進出した作家は数少なく、一般文芸参入当初は、果たして一般でやっていけるのか。一般で通用するのか。といった 心配する声も少なくなかった。
ところがそんな心配を尻目に、同年7月に光文社より『ひかりをすくう』、12月に新潮社より『空色ヒッチハイカー』 を次々と発表。06年7月「小説現代」に短編小説『闇をなでる』を掲載したのを皮切りに文芸雑誌にも小説を発表。2007年3月に「小説すばる」において初の連載 を得ると、その後は各様々な雑誌に数多くの連載を持つようになる。連載した作品は次々と単行本として発売され、07年11月から「別冊文藝春秋」にて 連載していた作品『橋をめぐる-いつかのきみへ、いつかのぼくへ-』が08年11月に単行本として発売されると、翌年(09年)の 入試において出題が殺到。私立中高学校6,7校の上に、”東京都立高校入試”において『橋をめぐる』の中の「永代橋」が出題された。
さらに、残念ながら受賞は逃したが2009年、『もうすぐ』が第22回山本周五郎賞候補に選ばれた。

09年4月現在も「野性時代」に『サイドチェンジ』、「小説すばる」に『葉桜』、「新刊展望」に『家飯Recipes of my life』を連載中で、多方面で活躍 している。(10年08月現在連載中の作品はすべて諸事情により休載中)
さらには、読書離れが叫ばれる今、「読書の楽しみを知ってほしい」「本作りの楽しみを知ってほしい」という思いから、全国各地の学校図書館の 図書便りに『図書館が、ここに。』を連載。もちろん学校側は原稿料を払う必要はなく、現在全国各地約210の中学、高校が参加している。
この取り組みは前代未聞で、多くの注目を浴び、07年7月29日の朝日新聞にも取り上げられた。
作品には一応『図書館が、ここに。』というタイトルがついているが、生徒たちが別のタイトルをつけても構わないという。


また、橋本紡さんは猫好きで料理好きであることでも知られ、著作にも大きな影響を与えている。
ほとんどすべての著作に猫や猫話が登場し、かつてはあとがきにも良く書かれていた。
料理も多くの作品に登場し、主人公が料理をするシーンも多い。 その描写は細かくリアルで、特に『九つの、物語』ではこの本だけでその料理が作れるんじゃないかと思ってしまうほどである。主に料理を作る、食べる場面は 幸せなシーンとして描かれ、読者に安らぎを与えてくれる。自身のブログにも頻繁に料理のことが話題にのぼる。


2008年よりコバルト・ノベル大賞、ロマン大賞の選考委員を、三浦しをんさん、古川日出男さんらと務めている。

最新刊は 完全版『半分の月がのぼる空 下』



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